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「片恋いコントラスト 第三巻」楠見清孝 感想。 »

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「片恋いコントラスト 第三巻」楡居 凪 感想。


楡居 凪
冴子が二年に進級したのと同時に、隣県から引っ越してきた転入生。
前の学校はかなりの進学校だったようで、
冠咲学園の一人分しかなかった(らしい)転入枠を実力で勝ち取っており、
転入後も学年一位を狙える学力の持ち主だったりします。

高校二年の男子としてはやや小柄……決して長身とは言えない子でして。
(冴子ちゃんよりは大きいみたいですけど)
そこら辺が大変コンプレックスらしく、
身長のことをネタにされ(たと感じ)るとついカッとなってしまうのだとか。
転校初日から冴子ちゃんと衝突しちゃったのもこのコンプレックスのせいで
見慣れない&新品の制服の生徒だったから一年生と勘違いしちゃっただけなのに、
オレが小さいからか!(どっかーん)みたいに受け取ってしまったらしく。

でも出会ったばかりの冴子ちゃんが
そんな凪の内面のあれこれを知るはずもないので
「ちょっと間違えちゃっただけなのに、何なのこいつ!」と、
第一印象はサイアク、好感度もマイナスからのスタートとなる訳です。



一巻、二巻の攻略対象の方々は、
あちらから好意的に接してきてくれましたけど
凪君と冴子ちゃんは口を開けばすぐに喧嘩って感じで
互いに関わりを持つつもりはなし。
でも席がお隣同士であるため、
何のかのと不可抗力的に接触を持つ機会がちらほら。
そうした中で「友達とかそういうの、嫌いだし」という凪の呟きを耳にし
友達を作らないように立ち回っていた自分に似ている気がして
以降、当初の悪印象を少々改めて接するようになります。

誤解を解くため、という名目で途中まで一緒に下校したり
お友達の眞泉さんを交えて、ではあるけれど一緒に食堂でご飯食べたり。
…一年生の頃の「誰とも付き合いを持たない」
という方針を引きずっていた冴子ちゃんならば、
こうして凪と関わりを持とうとすること自体がなかったんだろうなー。

一方、凪の方も口や態度が劇的に改善されたりとかしないんですけど
じわじわと全般的に軟化してきて、気付けば会話が継続するようになり
更には冴子ちゃんの学力を見かねて勉強を教えてくれるまでになっていたのでした。



さて。
この年は冴子ちゃんが愛してやまないラジオ番組
「アルカンジェ舞渡華(まどか)の微睡みナイト」、略称「マドナイ」初の
公開録音イベントが開催されることになった年でもありまして。

冴子ちゃんは小学生の頃クラス内いじめ問題に巻き込まれて以降、
特定の誰とも仲良くせず、ひたすら独りでいようと決めた子なのですが
そんな友人とか皆無だった彼女の心の支えにして、恩人であるのがこの舞渡華さん。

ある日たまたま耳にした「マドナイ」を何となく気に入って、熱心に聞くようになって。
お悩み相談コーナーに、自身の悩みと言いますか
小学生時代の後悔あれこれを書き綴って投稿してみたら、なんと採用されまして。
更には舞渡華さんから頂いた「回答」に救われてしまって。
その時点で既に自覚的ヘビーリスナーだったってのに
以後ますます舞渡華さんに心酔してどっぷりのめり込むように。

放送を毎回きっちり聞くだけでなく、
録音したのを学校に持ち込んで休み時間とかに聞いていたり。
悩みがあってもなくても毎回何らかの投稿を欠かさず行ったり。
冴子ちゃんが投稿を始めたのは中学生の頃らしいので
そんな感じで投稿を重ね続けて早数年。
気付けば冴子ちゃんのラジオネーム「ギンカ」は
マドナイリスナーから「ああ、あの」と言われるレベルの常連になっていたのでした。

そんな重度のマドナイ及び舞渡華さんのガチオタ勢であるところの彼女が
番組初の公開録音イベに心躍らないはずがないのです。

イベントは応募者多数のため抽選となってしまったので、
抽選発表日には直前のテストのことなど完全に忘れて必死に神頼みを繰り返し、
当選メールが来た瞬間は嬉しさのあまり
丁度その場に居合わせた凪に思い切り抱きついちゃう始末。

そしてイベント当日。
以前雑誌のインタビューかなんか受けていた時の舞渡華さんの格好を真似して
意気揚々と会場に向かおうとしたその時。

ばったり出くわしたのは自分と似たような
(つまり舞渡華さん風の)ファッションに身を包んだ凪君っていう。



この辺で、凪側の事情とかを少々掘り下げ。

凪君はいわゆる「転勤族」のご家庭の子。
親の仕事の都合により三年に一度のペースで
引っ越し&転校を何度も繰り返しています。

正直、転勤時に単身赴任でなくて家族帯同絶対な職場とか今時珍しい気がします。
もしかしたら職場、というよりご家族の方針なのかもですが
それが家族の絆を尊んだが故なのか金銭的事情なのかは知りませんが
そーゆー大人の事情なんて子供は知ったことないよね。

子供的に考えて、「転校」というのは言わばリセット。
良いことも悪いことも一切合切ひっくるめて全部やり直しの刑。

いくら「俺たち親友だよな!」とか言い合えるお友達がいたとしても
「転校しても手紙出すから!」とか約束していたとしても
書くネタなんてあっという間に尽きて、どうせすぐに途切れるもんです。
遠距離の付き合いって(友達でも恋人でも)
距離があるという不利をお互いの努力で埋めないと継続し難いので
連絡手段などが不十分な小中学生には大変厳しい。

で、当人は新天地でもう一回イチから、
周囲を伺いつつ恐る恐る友好関係の構築し直しです。
そういうのをあまり苦にせず、
新しい出会いをポジティブに喜べる人ならいいんでしょうけど、
不向きな人には大変きついもんですし、
そうして頑張ってもまた三年でリセットです。

「友達とかそういうの、嫌いだし」

数年おきに確実に転校する、なんて生活をずっと送らされると、
こういう思考になっちゃうってのは大変理解できます。

そんな彼の心の支えとなっていたのが舞渡華さん及び「マドナイ」。
彼もまた、冴子ちゃんと同じように数年に渡って投稿し続けている
ヘビーリスナーだったのでした。

ちなみに物語序盤で紹介される凪のラジオネーム「やなぎ」さんによるお悩み相談は
「自分のことがキライ」で「そんな自分を変えたい」というもの。
「友達なんて要らない」と孤高に、ドライに構えている彼ですが
ずっと現状のままで居続けたいとは思っていなかったようです。
(なお、恋バナ大好き舞渡華さんの回答は「恋をするといいわよ!」(意訳)でした)



こうして、互いが舞渡華さんガチ勢なのを認識したことにより
二人の関係は「たまたま席が隣同士のクラスメイト」から
マドナイについて語り合う同志、というか「お友達」になります。
(長年「お友達」から遠ざかっていた凪君はやや抵抗あったようですけど)
出会った当初の険悪ぶりを思うとちょっぴり信じ難い展開ですが
今思えばあの頃に遠慮なくがんがん言葉をぶつけ合ったせいで
変に気を遣わなくても大丈夫な、いい意味で対等なお友達になれた感があります。

で、そんな趣味の話で盛り上がれる仲良し男女の気持ちが
恋愛方面にシフトしていってしまうってのは、まあよくある話。
ただこの二人の、というか凪側の気持ちが加速した要因は
担任・楠見先生の存在のせいではないかなーと思う次第。

凪君は「転校生」なので、前年のこと――
冴子ちゃんと先生との間にあったあれこれを当然知りませんが、
先生を前にした時の冴子ちゃんのぎくしゃくぶりとかから
二人には自分の知らない「何か」があったっぽいことにすぐに気づいてしまうんですね。
のちに冴子ちゃん当人から「玉砕覚悟で告白してフラれた」って話を聞かされて
自分には関係ないことだってのにモヤモヤが収まらず。

一方、先生は一緒にいる機会が多くなった冴子ちゃんと凪君をからかってくるし、
それでいて「冴子ちゃんは自分の特別」と仄めすような言動もするので
凪からすれば煽られているような、
喧嘩売られてるような気分になって何かイライラするし。

そんなこんなを積み重ねているうちに
冴子ちゃんのことを友達というだけに留まらない、
恋愛的な意味で「好き」で、
お付き合いをしたい相手と認識するようになっていくのでした。

で、凪からそんな心境の変化を告げられてしまった冴子ちゃんは大変困惑。
冴子ちゃんにとって凪は久々に友達になれた男の子。
知り合って間もない頃は衝突もいっぱいしたけど
それを乗り越えた今では余計な気兼ねをせずとも楽しく過ごせる、
大好きな舞渡華さんや「マドナイ」のことを同じ熱量で語り合える初めての相手。
そんな彼のことは当然「好き」で「特別」で、大事にしていきたい大切な友達なのです。

この「好き」はかつて楠見先生に対して抱いていた、
いわゆる恋愛的な意味での「好き」に似ているような気がしなくもない。
そう考えるも、冴子ちゃんの恋愛経験は先生相手の、
辛くて苦しくて、あんな形で終わってしまったあの初恋くらいしかないので
凪くんから恋愛を意識させるようなお話を頂いて
冴子ちゃんがまず思ったのが「またフラれたらどうしよう」。
せっかく凪君と理想的なお友達関係になれたっていうのに
また恋愛だなんて余計な苦しい思いをして
挙句失ってしまうのでは、とか考えてしまうんですねー…

そういった事情もあり、凪からの告白にすぐに返事はできなかったものの
ゆっくりと時間をかけて自分の想いに向き合いながら
冴子ちゃんは二学期の終業式、クリスマスイブに一つの答えを出すこととなります。

この第三巻における冴子ちゃんの答え――「告白」は
本人に直接御対面して「好きです」って告げるのではなく
「マドナイ」のクリスマス恒例企画である告白コーナーを通してのものとなります。
マドナイガチリスナー2名の共演に加え、舞渡華さんとのリアルでの御対面等
物語における「マドナイ」の比重が最も大きかった巻だと思うので
こういう決着の仕方ってのもまあ面白いっちゃ面白いのかもしれません。

そうして冴子ちゃんからのラジオ経由の愛の告白を受け取った凪君の第一声は
「ラジオネームで告白すんな!」でございました。

いやまあその気持ちもわからないではないけどさー、
一応全国放送のラジオ番組でまさか本名で告白かます訳にはいかないからね!
その点、楠見先生は「先生」って言っておけば対象に間違いなく伝わる上、
他の無関係な視聴者には気づかれずに済む分、肩書って便利だな感。

それはさておき。
冴子ちゃんも凪くんも揃って「マドナイ」の常連リスナーで
かつて「リアルタイムお悩み相談」だなんてカオスな企画の時に
冴子ちゃんは「年上に憧れる中学二年生」
凪くんは「恋のライバルが隣に住んでいる女子高校生」
なんて舞渡華さんに勘違いされてたんですよね。
そんな二人が番組で告白→お付き合い成立とか
番組界隈では大変話題になったんじゃないでしょうかw



凪ルートは、あんだけお互い最悪な第一印象で
仲良くなるつもりとか全然ありえない! という地点からスタートしたせいか、
当人的には全くそういう意図はないのに
チケット当選した嬉しさのあまり、つい近くにいた凪に抱き着いちゃった、とか
図書館で本の雪崩から助けようとして、結果として押し倒しちゃった、とか
そういうハプニング系のイベントが多かったように思います。

あと、これは友達になってからだけど
風邪引いた時にわざわざ家までお見舞いに来てくれるとかさー。
そこでさりげに冴子ちゃんのお母さんと仲良く談笑したりして多分好印象稼いだだろうし
冴子ちゃんの友人である眞泉さんとも微妙に仲良しで
「(凪と)付き合っちゃえばいいのに」とまでオススメされるとか
大変希少なポジションにいらっしゃると思ってます。

なお、目出度く冴子ちゃんとお付き合いを開始した凪君には新たな、
「進学先に冴子ちゃんを連れて行く」なんつー野望が生まれた模様。
大学生ともなると、高校までと違って親の転勤に振り回されることなく、
ある程度自分の意志で居住地を決められる訳だし、
そうして決めた進学先に愛する彼女がいてくれたら、と願うのはまあ順当かなと。

問題は、進学するには冴子ちゃんの学力が微妙? な点だと思われます。
受験まであと一年くらい、(凪君がびしばしと)学力向上に努めれば
同じ大学、同じ学部は無理でも地理的に近い場所に連れて行く、
くらいはできるのではないのではないでしょーか。
お二人さんにはぜひぜひ頑張って欲しいものです。
PR

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